The Everywhere Millionaire:通過事業体が握る米国の隠れた富裕層
通過事業体を通じたMain Street millionairesが上位1%所得集中の半分以上を占め、税務データでその業種と政策影響が明らかになった。
The Launchpad Journal
ZwickとZidarの新著『The Everywhere Millionaire』は、通過事業体が1980年代以降の上位1%所得シェア上昇の半分以上を説明することを示す。シリコンバレーやウォール街ではなく、自動車販売店や歯科医院、飲食店を営む人々が富の多くを握っている実態を、税務データで明らかにした。
通過事業体が握る富の規模
1980年に米国企業所得の5分の1を占めていた通過事業体は、2011年までに半分以上を占めるようになった。ZwickとZidarの分析によると、この変化が上位1%の所得シェア上昇の半分以上を占める。通過事業体の利益は所有者の個人所得税申告に直接流れ込み、C法人とは異なる課税構造を持つ。1980年代以降の所得集中の主な要因として、通過事業体の成長が指摘され、Corporate Americaを上回る規模に達した。通過事業体には個人事業主、パートナーシップ、S法人が含まれ、利益が所有者個人に直接渡るため、法人税を別途負担しない。この仕組みにより、事業規模が拡大しても税務上の透明性が低く、従来の調査では捉えにくかった。Zwickらは1980年から2011年までのデータを比較し、通過事業体が企業所得全体の半分を超えた点を強調する。この成長は、Corporate Americaの所得シェアを逆転させるほどの規模に達した。通過事業体は全国に分散し、約300万人の所有者が平均2500万ドルの資産を持つ層を形成している。
富豪の主な業種
上位1%の所得を生む通過事業体の業種上位は、法律サービス、金融サービス、自動車ディーラー、コンサルティング、飲食店、会計サービス、金属加工製造、歯科医院と続く。鉄道や石油といった資本集約型産業ではなく、熟練労働に依存するサービス業が中心だ。Zwickは当初、技術・金融・エネルギー分野の新興タイクーンを想定したが、データは医師、歯科医、自動車販売、法律事務所などの日常的な事業を示した。ZidarとZwickは上位1%の所得源を業種別にランキングし、法律サービスと金融サービスが上位を占める一方、3位に自動車ディーラー、9位にレストラン、21位に歯科医院が入る点を指摘する。これらの業種は、所有者の専門スキルに依存する点で、工場や発電所のような資本集約型とは異なる。Zwickは当初、19世紀型の資本家像を想定したが、データは技能労働中心の事業を示した。著者らはこれをGilded Ageの再来ではなく、Main Streetでの日常的な事業拡大として位置づける。
税務データが明かした実態
2014年に財務省で活動した「Tax Ninjas」チームは、1100万以上の事業体と2200万人以上の所有者を結びつけるデータセットを構築した。Danny Yagan、Owen Zidar、Eric Zwickの3人はIRSの古いシステムと格闘し、個人と事業の税記録を連結した。連邦準備制度理事会の家計調査やForbes400リストでは捉えきれなかった中間層の富裕層像が浮かび上がった。Pikettyらの個人税データでは事業内容が不明瞭だったが、この連結により具体的な業種と所得源が明らかになった。Tax NinjasはIRSの古いコンピュータと散在するデータを克服し、1100万事業体と2200万所有者を紐づけた。Fedの家計調査はサンプルが5000世帯程度と小さく、富裕層の回答率も低い。Forbes400は公開情報に依存し、上位層のみを対象とする。Pikettyらの研究は個人税申告で所得集中を示したが、事業内容までは明らかでなかった。Tax Ninjasのデータセットはこれらの限界を補い、通過事業体の実態を可視化した。3人はpickup basketballの合間にこの作業を進め、後にUC Berkeley、Princeton、University of Chicagoの教授となった。
政策への影響
これらの富裕層は税制優遇の維持や規制強化で自らの利益を守るロビー活動を展開してきた。消費者負担の増加を招く一方で、経済成長の担い手としても機能している。著者らは彼らを「ステルス富裕層」と呼び、政治的影響力の大きさを指摘する。税負担軽減の戦いで勝利を収め、業界規制で競争優位を確保した事例が複数見られる。ZwickとZidarは、Main Street millionairesが税制優遇を勝ち取り、業界規制で利益を守ってきた点をデータで示す。これにより消費者コストが上昇するケースもあるが、著者らは彼らを善悪二元論で描かず、Tony Sopranoのような主人公として位置づける。政治的影響力は億万長者層に匹敵するとされ、政策形成への関与が大きい。superyachtや10,000平方フィートの住宅、ペットタイガーを所有する者もいる一方で、政策を有利に働かせる力を持つ。
アメリカンドリームとその影
自ら事業を起こして成功した事例も多い一方、税務優遇を最大限活用した事例も存在する。著者は「一部はトニー・ソプラノのような主人公だ」と述べ、善悪二元論を避けた分析を提示している。自力で富を築いた起業家像と、政策を有利に働かせた側面が併存する複雑な姿を描いている。Zwickらは、通過事業主の多くが消費者向けサービスで成功を収めた一方、税制や規制で優位を確保した点を指摘する。平均資産2500万ドルの300万人の事業主は、全国に分散し、億万長者とは異なる層を形成する。著者は彼らを「ステルス富裕層」と呼び、目立たない存在ながら政治的影響力が大きい点を強調する。hot dog販売やwaxing salon、urinal cake供給などの mundane な事業からも巨万の富が生まれている。
よくある質問
通過事業体とは何か
利益が所有者の個人税申告に直接渡る事業形態で、S法人やパートナーシップ、個人事業主が含まれる。C法人とは異なり、法人税を別途負担しない。
彼らの平均資産額は
約300万人の通過事業主の平均資産は2500万ドルと推計される。億万長者層とは別に、全国に分散した中堅富裕層を形成している。
上位1%の所得上昇にどれだけ寄与したか
1980年代以降の上位1%所得シェア上昇の半分以上を、通過事業体の利益増加が説明する。金融や法律サービスが上位を占める。
政治的影響力はどの程度か
税制優遇や業界規制で自らの立場を守る活動が活発で、億万長者層に匹敵する影響力を持つとされる。
データはどのように構築されたか
IRSの税務記録を事業体と個人所有者に紐づけ、1100万事業体と2200万所有者を結びつけた。従来の家計調査では得られなかった詳細な実態が明らかになった。
要点
- 通過事業体は2011年に米国企業所得の半分以上を占めた。
- 上位1%所得シェア上昇の半分以上を通過事業体が説明する。
- 主な業種は法律・金融・自動車販売・歯科などサービス業。
- 平均資産2500万ドルの事業主が約300万人存在する。
- 税務データ連結により従来の調査では見えなかった層が可視化された。
結び
『The Everywhere Millionaire』は、目立たない事業主たちが米国経済と政治に与える影響の大きさを、行政データで示した。億万長者中心の議論に欠けていた中間層の富裕層像を補完する内容となっている。ZwickとZidarは、通過事業体が不平等と政治力の中心にある点を強調し、従来の研究では見過ごされてきた実態を明らかにした。